沖縄で気をつけたい犬や猫の「がん」|地域に合った向き合い方と治療・予防の工夫

2025.06.18

犬や猫の寿命が延びたことで、今では「がん」が身近な病気のひとつになってきました。特に沖縄は、一年を通して紫外線が強く、皮膚がんのリスクが高いといわれています。

しかし、沖縄県内には動物のがんに特化した二次診療施設や大学病院がなく、高度な検査や治療が必要な場合には、県外の施設を紹介されることもあります。

そこで今回は、沖縄にお住まいの飼い主様に向けて、地域特有の環境をふまえた「がん」への備えとして、日頃の予防や早期発見のポイント、そして治療との向き合い方についてご紹介します。

■目次
1.沖縄で気をつけたい犬や猫の「がん」|よく見られる種類と注意すべきサイン
2.沖縄の環境をふまえた、無理のない治療の選び方
3.沖縄で受けられる動物のがん治療|知っておきたい治療の選択肢とその特徴
4.地域に合わせた在宅での緩和ケア
5.まとめ|愛犬・愛猫のがんと向き合うための沖縄での心構え

 

沖縄で気をつけたい犬や猫の「がん」|よく見られる種類と注意すべきサイン

沖縄の気候や環境は、動物たちの健康にもさまざまな影響を与えます。紫外線の強さや生活スタイルの違いから、沖縄では皮膚がんや口腔内腫瘍といった「がん」にかかるリスクが高いといわれています。
ここでは、特に注意しておきたいがんの種類と、気をつけたい症状についてご紹介します。

皮膚がん
沖縄は全国の中でも紫外線量が多く、紫外線は皮膚がんの原因のひとつとされています。被毛が薄く、紫外線の影響を受けやすい「目や耳の先端」「鼻」「口まわり」は注意が必要な部位です。
特に鼻は紫外線ダメージを受けやすい部位として知られており、日々の観察が大切です。

また、お腹や内もものような日陰になる場所でも、地面からの照り返しによって紫外線の影響を受けてしまうことがあります。
こうした部位に硬いしこり治りにくい傷、皮膚炎が見られる場合は、早めに動物病院にご相談ください。

 

口腔内腫瘍
口腔内腫瘍(口の中にできる腫瘍)は、人だと食生活との関係が指摘されていますが、動物の場合はまだはっきりとした原因はわかっていません。
しかし、高温多湿な環境では口腔内の衛生状態が悪くなりやすく、それが腫瘍のリスクに関係している可能性も考えられます。

また、犬や猫の口腔内腫瘍は悪性(がん)であることが多く、早期発見がとても重要です。ところが、初期は痛みや腫れなどの症状が出にくいため、気づいたときにはすでに進行しているケースも少なくありません。

進行すると、以下のような変化が見られることがあります。

・口臭がきつくなる
・よだれが増える
・口や鼻から出血する
・食べにくそうにする、食事量が減る
・体重が落ちてきた
・口の中にしこりやできものがある

普段のケアでお口の中をそっと観察する習慣を持つことで、異変に早く気づけるかもしれません。少しでも気になる点があれば、迷わず動物病院に相談しましょう。

 

沖縄の環境をふまえた、無理のない治療の選び方

沖縄県内には、二次診療施設や大学病院といった高度な獣医療を提供する機関がないため、がん治療などで精密な検査や専門的な治療が必要な場合には、県外の病院を紹介されることもあります。

近年では、遠隔診療(オンライン診療)を活用する動物病院も増えてきています。定期的な経過観察やお薬の相談など、状況に応じて取り入れることで、移動の負担を減らすこともできます。

こうした沖縄ならではの医療体制をふまえたうえで、愛犬や愛猫にとって無理のない治療計画を立てることがとても大切です。

 

沖縄で受けられる動物のがん治療|知っておきたい治療の選択肢とその特徴

動物のがん治療には大きく分けて「手術」「抗がん剤(化学療法)」「放射線治療」があり、がんの種類や進行の程度、体調などに応じて治療法を選んでいきます。

手術療法(外科的切除)
がんがまだ広がっていない段階であれば、手術によって取りきることで完治が期待できることもあります。

ただし、がん細胞は目に見えない範囲にも及んでいることがあるため、腫瘍のまわりも含めてしっかり切除することが必要です。
また、手術には全身麻酔が必要となるため、年齢や体調、ご病気の有無などをふまえて、慎重な判断が求められます。

 

化学療法(抗がん剤治療)
抗がん剤を使った治療は、全身に広がったがん細胞にも作用する点が大きな特徴です。
特に、扁平上皮がんや犬の悪性黒色腫など、遠隔転移しやすいタイプのがんに対して使われることが多く、再発や進行の抑制への効果が期待されています。

ただし、すべてのがんに効果があるわけではなく、手術や放射線治療を合わせて行うことが一般的です。

 

放射線治療
体にメスを入れずに、がん細胞にピンポイントでアプローチできるのが放射線治療の特徴です。痛みの緩和にも使われることがあり、主に扁平上皮がんや悪性黒色腫の治療に用いられます。

 

その他の治療法(補助的療法)
最近では、オゾン療法、免疫療法、再生医療など、体への負担が比較的少ない治療法を取り入れている動物病院も増えてきました。
まだ発展途上の分野ではありますが、これまでの治療と組み合わせることで、生活の質(QOL)を保ちながら治療を続けられる可能性もあります。

 

地域に合わせた在宅での緩和ケア

緩和ケアとは、痛みや不快な症状をできるだけ軽くしながら、暮らしを大切にしていくケアです。多くの場合、がんが進行しているケースや、積極的な治療が難しいと判断されたときに選ばれます。

<ご自宅でできる主なケア>
在宅での緩和ケアでは、主に以下のようなサポートを行います。

鎮痛剤による痛みのコントロール食事や水分補給のサポート(必要に応じて栄養補助食品の活用)
マッサージや温熱療法で筋肉の緊張や痛みをやわらげる
呼吸が苦しそうな場合には酸素吸入を検討
食事や飲水が難しいときには皮下点滴での水分・栄養補給

こうしたケアは、獣医師と連携しながら、愛犬や愛猫の様子に合わせて少しずつ取り入れていくことが大切です。

 

<沖縄の気候をふまえた環境づくり>
気温と湿度が高い沖縄では、体力や免疫力が落ちている犬や猫にとって、暑さや湿気が思わぬ負担になることもあります。
特に、がんが進行している場合は脱水や感染のリスクが高くなるため、過ごす環境を整えることで、リスクを軽減できます。

エアコンや除湿機を使って快適な室温・湿度を保つ
通気性の良い寝床や冷却マットで体の熱を逃がす
水分補給をこまめに促す

日々のちょっとした気づかいや工夫が、体への負担をやわらげ、少しでも穏やかな時間につながります。

 

<ご家族の気持ちにも寄り添って>
緩和ケアは、病気を治すことを目的としたものではないため、日々の中で小さな変化や弱っていく姿を目にすることもあります。
「もっと何かしてあげたい」「これでよかったのだろうか」と、戸惑いや無力感を抱くことがあるかもしれません。

だからこそ、一緒に過ごすご家族の心のケアも大切な要素のひとつです。つらい思いを言葉にして話すだけでも、心が少し軽くなることがあります。
最近では、在宅ケアやご家族のメンタルサポートに対応している動物病院も増えています。悩んだときは、一人で抱え込まず、信頼できる専門家や身近な人に相談してみることも選択肢のひとつです。

 

まとめ|愛犬・愛猫のがんと向き合うための沖縄での心構え

沖縄は紫外線が強く、皮膚がんのリスクが高いといわれていますが、がんは早期に見つけて適切な治療を始めることで、完治を目指せるケースもあれば、穏やかな時間を大切に過ごせる可能性もあります。
そのためには、定期的な健康診断と日々の小さな変化への気づきが、何よりの備えになります。

そして、いざというときに安心して相談できる「かかりつけの動物病院」を見つけておくことも、大きな支えになります。日頃から信頼関係を築いておくことで、診断や治療についても落ち着いて話し合うことができます。

愛犬・愛猫がいつまでも穏やかに過ごせるよう、地域の特性をふまえたサポートを上手に活用しながら、前向きにがんと向き合っていきましょう。

 

■関連する記事はこちら

 

沖縄ペット情報サイト

&PET OKINAWA