愛犬の気持ち、分かりますか?沖縄県内唯一のペット行動心理カウンセラー「ペットビヘイビアリスト」米澤さんが語るペットの行動心理とは

2019.09.20

「ペットビヘイビアリスト Pet Behaviourist」(以下ペットビヘイビアリスト)という職種をご存知でしょうか?ペットビヘイビアリストとは、一言で言うと「ペットの行動心理カウンセラー」。動物における心理や行動学に基づいて、犬や猫の根底にある心の問題を読み解き、潜在的なニーズや課題と向き合っていく、人間の世界で例えるなら「臨床心理士」のような存在です。

海外では多く存在する「ペットビヘイビアリスト」は、日本ではまだあまり知られておらず、従事者の数も少ないのが現状です。そんな中、日本でペットビヘイビアリストとして活動を行った第一人者であり、沖縄県内唯一のペットビヘイビアリスト「米澤アキ」さんに、ペットの行動心理についてお話を伺ってきました。

 

「ビヘイビアリスト」って、具体的に何をする人?行動心理学を用いたカウンセリングとは

 

 

米澤さん「カウンセリングの際は、まずどういう生活をしているのかや、課題によっては家の中のレイアウト(どこにベッドがあって、生活の導線はどうなっているのかなど)をお伺いします。そして、飼い主さん自身の口から語られる“ペット”と、実際に部屋に入ってきたときのペットの様子を見て、どういうタイプの子なのかや、飼い主さんとの関係性がどうであるかなどを観察します。」

 

ー飼い主さんが思っている関係性と、ペットが思っている関係性が違っているということもあるのでしょうか?

 

米澤さん「あります。印象的だったケースをお伝えすると、飼い主さんが帰宅した時に『愛犬がすごく歯をむき出して向かってくる』と、すごく悩んでいた飼い主さんがいたんですよ。結局それは“グリ二ング”という犬の行動だったんですけど、要するに犬の喜びが表に現れていただけだったんですよ。飼い主さんは、『歯をむき出している=攻撃的な心理』だと思ってしまったようなんですが、実はそうではなく、ウェルカムな表現だったんです。」

 

「歯をむき出す=嫌われている」という一般的に考えがちなことでも、実際はそうじゃないこともあると、米澤さんは話します。逆に、シッポを振ってニコニコ笑っているように見えても、実は心の中はウエルカムではなく攻撃的な心理だったというケースも。

 


米澤さん
「一概に“シッポを振っている=好意的”というわけではないのに、誤って手を出して噛まれてしまったり、逆に吠えているからといって攻撃的な意味合いじゃなかったりもして、その辺はかなり複雑なんです。カウンセリングでは、その複雑さや“この子はこう思ってこういう行動をしているんだよ“ということを、飼い主さんに伝え、ペットを理解してもらうように導くことを大切にしています。」

 

カウンセリングで見えたものを「レッスン」を通して解決に導く

米澤さん「いただけない行動をした時に、“直す”という概念ではなく、なぜそういう行動が出てくるのか、を深く考えることで、見えてくるものをベースにレッスンを構成します。カウンセリングでは『その時瞬きしてましたか?』とか『ちらっとこちらを見ていませんでしたか?』など、細かくヒアリングを行います。それらをしっかり聞き出して、心理が見えて初めて、レッスンが始まります。」

 

ーどんなレッスンを行うのですか?

 

米澤さん「例えばトレーナーさんがするようなレッスンをすることもあります。内容はペットによって様々なので、一概に『こういうことをやる』というのはありませんが、今発生している感情だけではなく、その感情のベースとなる情動を読み取り、その子に合わせたレッスンを行います。中にはレッスンを行うためのレッスンを行う必要のあるペットもいるんですよ。情動が低い位置にあると、感情も低くなってしまうので、まずはそこからスターする場合もあるということです。」

 

米澤さん「例えば人間でも、なんとなく気持ちが乗らないこともありますよね?朝起きたらため息から始まるときもあれば、朝起きて『さあ今日もやるぞ』って、意気揚々と1日をスタートできる日もある。それは情動のアップダウンがあるからこその気持ちなんです。まずは情動と感情を正常な位置にもっていきながら、レッスンを行います。」

 


現在はペットショップにて、保護犬・保護猫を譲渡に向けてレッスンを行っている米澤さん。


米澤さん
今レッスンしている子たちは、最初は人が近寄ると震えたり、抱っこしようとすると脱糞してしまったり、人が見ているとご飯を食べてくれなかったりっだった様です。そういった事例の場合はまず、個体の性質を理解し、行動の意味を分析しながら、その子たちに合わせて少しずつ歩み寄っていきました。」


最初はスタッフに対して心を閉ざす様な行動があった子たちも、米澤さんが携わるようになり、わずか数日で変化があったのだそうです。スタッフの前でご飯を食べられるようになったり、固まった表情が柔らかくなったり、犬の方から遊びのお誘いをしたり。

 

米澤さん社会性というのは社会の中で学んでいくことにあると思っています。なので、まずは外に出すことからスタートします。レッスンというより、セッションのようなイメージかもしれません。形ではなく状態を教えていきます。リラックスした状態に持っていくことが出来たら改めて、コミュニケーションを教えていきます。」


 

「猫も犬も、人と一緒に外に出てください。挑戦したり一緒に何かをすることで犬・猫・人も共に成長することが出来ます。」

 

沖縄で「ビヘイビアリスト」としての今後の活動

 


北海道から沖縄に引っ越してきたばかりだという米澤さん。沖縄で今後、どういった活動をするのか聞いてみました。

 

米澤さん「今後は、沖縄の飼い主さんたちが猫や犬を外に連れ出して、お互いが楽しめるようなイベントもやっていきたいと思っています。その為には外に連れ出すためのマナーも必要になってくるので、教室の企画・開催等もしたいと思っています。他にも一般の飼い主さんがペットたちをより理解すること・また新たな発見が出来る機会を作っていければと思っています。相談にも乗れるような体制をつくっていければと思っています。」


犬だけじゃなく、猫もリードに慣れさせ連れ出し一緒に体験させてあげることで世界を広げてあげることができるのだそうです。ペットをペットの世界に押し込めるのではなくて、可能性を広げてあげることが大事なのだと語ってくれました。

 

◆米澤アキさんプロフィール

北海道の自然の中で野生・家畜・伴侶動物の行動や心に興味を抱きながら幼少期を過ごす。日本では動物の行動心理を学べる場所がなかった為、渡英。ボーダーコリーのAshと帰国後、日高・札幌に拠点を置き犬猫問題行動専門の相談所を開き12年ほど活動。沖縄では猫達の可能性を広げるべくウォーキングキャットの育成やモデルケースに着手中。